最終更新日:2021年5月31日
JBMIA(一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会)では、1998年5月、「つながる」「見つかる」「手に入る」を標語とした、ネットワーク上でのオフィス機器間の接続性、データ交換性を飛躍的に向上させる「統合化したインタフェース仕様(“BMLinkS”)」の実現に向け、「OAシステム機器プロジェクト委員会」を設立し活動を開始した。 2年間を1期としたこの活動も着実に歩を進め、現在に至るまで、標準化仕様策定及び商品化のための環境整備の両面で数々の取り組みを行い、実績をあげている。
1998年5月に設立されたOAシステム機器プロジェクト委員会は、1999年12月、新たなオフィス機器の統合インターフェースに関する標準仕様(前記のDiscovery、Data Format、Job/Device Controlの3つの仕様)をとりまとめ、BMLinkSの方向性を示したプレス発表を行なった。これに合わせ2次募集を実施した結果、新規の参加会社が加わり14社での活動となった。 この14社のうち10社(12機種)がこの標準仕様である「BMLinkS」のプロトタイプ実装を行ない、2回の接続検証テストを経て、2000年5月には東京ビッグサイトで開催された「ビジネスショー2000」への出展を果たした。
ビジネスショーでは1日10回のデモを実演し、4日間を通して4000名を超える見学者に対し、BMLinkSの狙いや利便性をアピールすることができた。
第1期のBMLinkS仕様の策定及びビジネスショーでのデモの成功を受けて、第2期活動が開始された。
第2期の主要な活動目標は大きく2つあった。その2つとは、「標準化推進」と「商品化推進」である。
標準化の推進においては、メジャーな標準化グループとの連携の模索、BMLinkS仕様書の改訂、実際の製品化を目標とした実装仕様書の開発、策定等を行ない、2001年7月から9月にかけて、BMLinkS仕様の検証のための実証接続試験を実施した。商品化の推進では、BMLinkSの商品性の打ち出し方を検討し、会員企業向けのデモを実施することにより、商品化に向けた基盤を固めることができた。さらに、ビジネスシナリオ等についても検討を行った。
第3期から、BMLinkSの実用化のステージに入り名称をBMLinkSプロジェクト委員会に改め、実質的な市場導入および普及促進のフェーズに移行する。そのためにBMLinkSの商標登録を日米欧で行うと共に、オフィス機器相互接続に関する統合インターフェース仕様(BMLinkS)に準拠していることを認定する認証試験を行ない、2004年5月までに約40機種が認定された。またBMLinkSに準拠した機器でプリントサービスを利用するための共通ソフトウェア「統合プリンタドライバ」を開発し、その公開配布を行った。
さらに、BMLinkSを継続的に発展させていくためには、各社の製品化に向けた活動とともに、BMLinkSの機能拡張、BMLinkSサービスを実現するためのインフラ整備等が重要なポイントと の認識から、スキャンサービス及びストレージサービス仕様の追加公開を行った。また、プリントサービスをさらに充実するために機密印刷機能の拡張を行ない、実証試験の準備を完了した。
第4期は、第3期からの継続取り組みとして、モバイル環境に於けるプリントサービス拡張に向けた要件の明確化とBMLinkSの普及促進を目的とした機密印刷機能付きプリントサービスのフィールドトライアルを実施した。この結果を踏まえ、機密印刷機能や使い易さを向上した統合プリントドライバのバージョンアップを行った。また、スキャンサービス・ストレージサービスの仕様に基づき、ネットワークスキャン機能をより簡単に利用できる共通ソフトウェア(ストレージサービス・ドキュメントビューア)を開発し発表した。これにより、オフィス機器が備えるネットワークプリント機能、ネットワークスキャン機能およびネットワークストレージ機能を、ベンダーの枠を越えて簡単に利用できる環境、すなわちBMLinkSによる「ドキュメント流通インフラ」の環境が整った。
第5期では、BMLinkSプロジェクト委員会の活動内容を、多くの方々に、よりわかりやすくご理解いただくために「活動趣意書」を策定し、委員会の役割や目標、目指すべきゴール等を明確化・明文化した。
マルチファンクション機器(複合機)を始めとするオフィス機器をネットワーク環境下で更に安心して効率的に活用いただくために、活動趣意書に沿い、またユーザ及びSIerに対して実施したヒアリング調査等を踏まえて、デバイス管理分野・セキュリティ分野に対する取り組みを行い、BMLinkSオフィスデバイス管理標準仕様、および、セキュリティホワイトペーパーを策定し、公開した。
デバイス管理に関するBMLinkS標準仕様を利用することによって、SIerは複数ベンダーの機器を効率的に管理するアプリケーションを開発し易くなり、またユーザやIT管理者は、複数ベンダーの機器が混在した使用環境においても、全てのBMLinkS対応機器に対し、統一的な方法で、安全に、機器の設定、監視、及び利用履歴情報の取得ができるようになる。
また、セキュリティホワイトペーパーではBMLinkS対応機器を安心安全に使用するための運用方法を解説した。
これらにより、マルチファンクション機器(複合機)をより効率的に使えるデバイス管理業界標準の基盤が整った。
第6期活動は「応用と拡大」と位置付け、以下の2つの方向を目指して活動を開始した。
「応用」の成果として、マルチベンダー環境のオフィス機器管理コストを低減するためのソリューション開発を支援する「オフィス機器管理SDK」を発表した。このSDKを用いてソリューションを構築すると、容易にマルチベンダー対応が可能となる。実際にあるシステムインテグレーター様で試用していただいており、SDKの普及活動を継続している。
「拡大」の成果として、今後、更なる強化を求められる「ドキュメントセキュリティ」の分野に重点をおき、新たな標準である「BMLinkS情報マーキング標準仕様書」を制定および公開した。この標準を採用したオフィス機器では、ドキュメントに付加されたQRコードを用いて、「だれが、いつ、どの機器で」ドキュメントを複写したかのトレースやドキュメントの複写防止を行うことが可能となる。
QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。
第6期では、マルチベンダー間での機器管理ソリューションを容易に提供可能な基盤を確立した。また、今後更なる強化を求められるドキュメントセキュリティ分野へ向けて第一歩を踏み出すことができた。
第7期活動は「活用」と位置付け、以下を目的に活動した。
新たな価値提供の成果として、電力の「見える化」「制御」の仕様拡張、BMLinkS対応外のデバイスも対象とする「管理系フレームワーク」の創設を入れてオフィスデバイス管理標準仕様書を改訂し、オフィスデバイス管理標準SDKを強化した。
見える化では、用紙総量・出力形態、TEC値・電力モード別時間・総電力量などのエコ情報を集計表示することができ、制御では、電力モード移行・モード移行時間設定・スリープ復帰などを、リモートから一括で指示することができる。
また、新たな価値提供のもう一点として、情報マーキング(IM)埋め込み、読み取りとプリント時反映のフォーマット仕様策定による電子文書対応、トレースログのシステム連携機能拡大を入れて情報マーキング標準仕様書を改訂した。
トレース機能強化により、外部システムと連携して紙文書と電子文書を多世代に渡りトレースし、情報漏洩の抑止が可能であることを検証した。
普及促進の成果として、オフィスデバイス管理標準SDKとプリントクライアントSDKを無償で公開し、BMLinkS標準仕様を活用したアプリケーションやシステムの開発を容易にした。
BMLinkSの各仕様は、日本の主なオフィス機器ベンダーの参加によって開発され、すでに複数のベンダーから500機種を超えるBMLinkS認証機器が市場に提供されている(2011年3月時点)。これによって、ネットワーク上のオフィス機器を簡単かつ便利に使えるマルチベンダーシステムが現実のものになっている。プリント・スキャン・ストレージサービスに続いて、マルチベンダー間での機器管理の実現が可能となり、ドキュメントセキュリティ分野への展開も行われ、オフィス機器により提供されるサービスが今後益々進化することが期待される。